地雷グリコの感想。一番面白かったゲームは?

地雷グリコの感想

射森矢真兎が活躍する小説版ライアーゲームで、とてもクオリティが高い。小説でいけんの?というのが読む前の感想だった。というのも、 ルール説明するにも戦略を行うにしろ、正確に説明するには 視覚的な表現が必要になってくるからである。勿論既に読んだ方は分かる通り 杞憂に終わる。適度に図示され、分かりやすくゲームが進んでいく。

ことわり

本記事は地雷グリコを既に読んだ人向けのブログです。未読の方は本記事は読まず、左メニュー(スマホの方は上)の 「地雷グリコの紹介」を読むことをお勧めします。

他の作品と比べて良かった点

途中過程を全て理詰めで伝えている

最近の心理戦作品の良くない風潮として、「必殺技」「必勝法」的な戦法に終始して 他は投げやりにしてしまう、ということが挙げられる。例えばジャンケットバンクやトモダチゲームは序盤のゲームは丁寧に進めるが、 物語が進むにつれ、「戦略っぽい1策」→(カット)→「必勝法ドーン」で済ませようとしており、もやもやしている。
本作は過程を全て書いているうえ、その内容がちゃんと理論的で面白い。この点が個人的に評価が高い

珍しく話が重くない

負けたら借金1億、死ぬ、奴隷、などの要素はギャンブル漫画の特性上良くあるが、 正直個人的にはデスゲームの「デス」の部分にあまり興味がない。 戦略作戦必勝法。目的を果たすための戦略の殴り合いが面白いのであって、そちらに傾倒したのは嬉しい。

ゲームの種類が多い上に被りがない

百人一首、グリコなど、元のゲームを改変する形で考案されている。そのため、 「また多数決か」「またじゃんけんか」など、似たような形式が出ない点は良い。

全体を通して気になった点

射森矢真兎の名前

最初、矢真兎(やまと)という男性だと思って読んでいた。 他の登場人物として、塗辺・椚先輩・桶川・雨季田絵空など、馴染みのない苗字が多かったがちょっとノイズになっている。 とはいえ、こういった名前は「音声」だと強い。例えばドラマ化アニメ化をする運びになったとき、 それぞれの名前が特徴的で分かりやすい。また、名前の唯一性も高く、他の作品のキャラクターを汚染しない点もいい点である。

フォールームポーカー

ゲーム自体はありだが、最終ゲームにしてはパンチに欠け、これが最後か...という感想。 言質を取るという戦法は本作品において頻出するが、これの使用に終始し、幅を越えることなく終わってしまった。

坊主衰弱

膝の上で気づかれないように同じカードを箱から取り出すのは流石に無理がある。 百人一首という、心理戦で使われたことのない題材を使いたかった意図は評価したいが、 百から数枚を正確に取る、という現実味を考えるとあまり設定が活きていないように思う。

特に面白かったゲーム

だるまさんがかぞえた

個人的にはこれ一択。最もばかばかしく、最も予想させず、最も納得させた戦略だった。 恐らくだるまさんがころんだ、から発想してこの戦略を考えたのだろうが、自分はここにたどり着く自信が0で、 完全にやられたと思った。
というのも、実は筆者もこれに似たゲームを作ったことがあるが、こんなてん末は想像できなかった。

軽く自分の類似ゲームを説明。2人ゲームで、各自20までの数字を3roundに振り分け、1,2,3roundで合計する。その数だけ進むことが出来、それを越えると崖から落ちる、というチキンレースのゲームだ。 どちらかが1roundでも落ちたら負け。落ちなかった場合は進んだ合計で競う。

戦略としては、0,0,20などと設定する方法が考えられ、これは「だるまさんがかぞえた」でも行われた手法だ。 他に自分が考えた戦略として、20,0,0などと設定し、1round目であえて0歩しか進まない、という戦略。すると相手は、 「1round目は0だったんだ」と予想し、2,3roundで飛び出そうと考える。。 しかし実際は1round目で既に20を消費しているため、2round目も3round目も0。落ちる、という寸法だ。

中々いい戦略だと考えていたのだが、この作品に触れ、何食ったらそんなん思いつくんだ、という感想。 この戦略をさせるために、相手を動けない状態であることを確約させる射森矢真兎の誘導も見事だった。

世間的には自由律じゃんけんだが...

一般的には自由律じゃんけんが面白かったようだが、正直本当にそうか?と思った。 そもそも「強すぎない」というルールの上で何をやってもいい、というルールは 曖昧過ぎ、制作都合だなと思った。曖昧を100歩譲っても、 佐分利の取る戦略が「後出しじゃんけん」で終了し、曖昧にした割には可食分を残しすぎている点も気になった。 必殺技に当たる手も「まあ、うん、まあ...」という感じで、人によると思う。「椚先輩のジャッジを信じた」と言えば聞こえがいいが。 この話を中盤に持っていきたかったのは感性依存でチャレンジングだったから、 また、ちゃんと心理戦を分かっていることを読者に示してからでないと成り立たないからだと思った。
それでも分かりやすくて実際に出来るという点で大衆に人気になっているのだろうが、素直に評価できなかった。
ただ創作をするうえで、LIARGAMEでいう力業など、許されるかどうかのラインにチャレンジしていく姿勢は重要だと思うので、同時に見習おうと思った点でもある